| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-01 (Oral presentation)
河川の洪水攪乱で生じた堆積裸地には,一年生草本を主体とした先駆的な草本群落が形成されるが,その構成種は河川の水際から砂礫堆の内部にかけて大きく異なる.本研究では種組成が異なる先駆草本群落の構成種の種子の機能特性を比較することで, 群落の成因としての種子供給の重要性を明らかにすることを目的とした.
多摩川と鬼怒川の大規模洪水から2-3年目の先駆草本群落を対象として植生調査を行い,得られた資料から 3つの群落(A:オオイヌタデ-ヒロハホウキギク群落,B:ネズミムギ-スズメノチャヒキ群落,C:カワラニガナ-カワラヨモギ群落)を識別した. 各群落の主要構成種の種子を採取して, 散布に関わりうる種子特性6項目(形態,付属物,長径,種子重,浮遊性,結実季節)の計測・記録を行った.これらの種子特性を用いてクラスター解析を行ったところ, 10タイプの種子機能群(SFG)に分類できた. SFGの相対優占度を群落間で比較すると,各群落の主要構成種の種子特性にはそれぞれ特徴があった. A群落では➀結実季節が早く沈みやすい微細種子と➁結実季節が遅く沈みにくい大型種子,B群落では➀吸水することで最終的には沈む中~大型種子と➁結実季節が遅く小さくて軽量な種子, そしてC群落では➀結実季節が遅く小さくて軽量な種子が大半を占める結果となった.さらに,土壌要因などの立地環境に対する形態的・生理的な適応を反映していると考えられる成植物の特性6項目を用いて,同様に植物機能群(PFG)の分類を行った. 各SFGの相対優占度と各PFGの相対優占度について, Bray-Curtisの非類似度を用いて群落間で比較したところ,SFGのほうが群落間の違いが大きかった. このことから,河川の堆積裸地に成立する先駆草本群落の種組成は,特定の立地環境への適応による生存率の違いよりも,初期に供給される種子の組成に強く影響されていると考えられた.