| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-02 (Oral presentation)
半自然草地は、明治時代には国内で国土の10%以上と広く分布していたものの、草地利用の減少とともに、放棄され二次林化したり、植林地へ転用され、面積は1/10にまで激減した。それに伴い草原性植物種は大きく減少し、絶滅危惧種に認定されるものも増えた。二次林や植林地になった場所でも、伐採地や林道脇など開けた環境下では、草原性植物種が遺存的に生育することが指摘されている。神戸市北区に位置する小河山林は、明治初頭(1892-1910)の地形図では荒地(半自然草地と推定される)であったことがわかるが、1920年代の地形図ではすでに広葉樹の二次林および針葉樹林(植林と推定される)となっており、日本各地で同時期に起きたものと同様な土地利用変化がみられたことが確認できる。その後、小河山林は約100年間森林として維持されてきたが、現在では大部分が管理のなされない放棄林となっている。近畿地域の放棄二次林では照葉樹の優占度の増加などにより、放棄植林地では林分成長に伴い、林床の光環境が悪化するため、草本性植物の多様性が減少することが知られている。そのため、小河山林内でもかつて多く分布していたと考えられる草原性種が大きく減少していることが予測される。一方、神戸市が同地域を管理するために作った作業林道の周辺は定期的に草刈りがなされ、明るい光環境が見られるため、作業林道には草原性種が遺存的に残っていることが予想される。本研究では、作業林道および隣接する二次林林床の植生や環境要因を調査して、二つ予測の検証を行った。
調査の結果、林床では草原性植物の多様性が非常に低い一方で、作業道上では、キキョウやオミナエシなどの希少になりつつある種も含む草原性植物の多様性が低いながらも維持されていることが明らかになった。土壌・光環境要因の測定結果もふまえて、作業林道上での多様性が維持されている理由について議論する。