| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-03 (Oral presentation)
木本性つる植物(以下、つる植物)はホストとなる樹木の成長を抑制することがあるため、遷移の軌道に影響を与える可能性が指摘されている。本研究では、1996年の台風により風倒被害を受けた人工林跡地において、つる植物が二次遷移における樹種構成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、発達段階の異なる植分でのつる植物の階層ごとの出現状況と、つる植物の影響が大きいと予測される低木林段階での高木性樹種間のつる植物の取り付き割合の差異、および被覆と枝葉枯死割合の関係を調べた。
風倒被害地に成立したススキ草原と低木林、過去の伐採後に二次的に成立した高木林の 3つの群落タイプで植生調査を行ったところ、つる植物の被度は低木林で最大となった。つる植物の取り付き型の被度割合を比較すると、ススキ草原と低木林では巻き付き型が約70%を占めていたが、高木林では相対的に付着根型が増加した。
先駆的な高木性樹種のエゴノキ、ホオノキ、ミズキの 3種を対象として低木林でラインセンサスを行ったところ、樹種間でつる植物の取り付きを受ける割合には差がなかったが、エゴノキでつる植物の被覆割合が高く、被覆割合が高いほど枝葉枯死割合が高くなることが示された。植生調査の結果より、低木林で被度が高いエゴノキが高木林で減少していることからも、エゴノキはホオノキやミズキに比べてつる植物の被害を受けやすいと考えられた。
以上から、二次遷移系列上では、低木林の段階で高木性樹種と巻き付き型つる植物の競合が起こりやすいこと、つる植物から取り付きを受ける割合は樹種間で差はないが、取り付きを受けたときの樹木側の耐性には違いがあることが明らかになった。そのため、つる植物は低木林の段階で被覆への耐性が弱い樹種を枯死させ、高木林の林冠構成種の量的配分を変化させている可能性があると結論づけた。