| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-04  (Oral presentation)

寄生植物の採餌行動が草本群集における多種共存に与える効果
Effects of foraging behavior of parasitic plant on species coexistence in grassland community

*野宮陸, 山尾僚(弘前大学)
*Riku NOMIYA, akira YAMAWO(Hirosaki Univ.)

寄生植物は群集内で優占している宿主植物種に寄生することで、植物群集の種多様性を一時的に高めることが報告されている。しかし、寄生植物の存在が安定的に群集の多様性を維持するのかは不明である。全寄生植物であるアメリカネナシカズラ(以下、ネナシカズラ)は、宿主となる植物種に対して嗜好性を示す。ネナシカズラは窒素含有量のマメ科植物には高い嗜好性を示す一方で、イネ科植物の嗜好性が低い。このような寄生植物の宿主植物種に対する嗜好性の違いは、宿主植物種間の連合効果により、群集内における低頻度の植物種の競争的な有利性(負の頻度依存性)をもたらし、宿主植物種の安定的な共存に寄与している可能性がある。本研究では、ネナシカズラが自然発生しているヤハズソウ(マメ科)―エノコログサ(イネ科)群集を対象とし、①各宿主植物種に対する嗜好性、②宿主植物種間の連合効果、③ネナシカズラ存在条件下と不在条件下での宿主間の競争能力を評価し、ネナシカズラが植物群集に与える効果について考察した。野外調査と栽培実験の結果、①ネナシカズラはヤハズソウに対する嗜好性が高く、ヤハズソウが優占する草地パッチに多く分布していた。②野外で周囲にイネ科の個体数が多いヤハズソウほど、ネナシカズラによる寄生率が低かった。栽培実験においても、局所的なイネ科の密度を増加させると、ヤハズソウに対するネナシカズラの寄生率が低下することが確かめられた。③ネナシカズラ不在条件下では、ヤハズソウがエノコログサよりも種子を多く生産したが、ネナシカズラ存在下ではイネ科がより多くの種子を生産した。以上の結果から、ネナシカズラの寄生に対する宿主植物種間の連合効果は、宿主植物種の安定的な共存を促している可能性が示唆された。


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