| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-07  (Oral presentation)

撹乱-多様性-生態系機能の関係の環境ストレス依存性:数理モデルによるアプローチ【B】
Environmental stress dependence of disturbance-diversity-ecosystem function relationships: a mathematical model【B】

*瀧本岳(東大・農), 佐々木雄大(横国大・環境情報)
*Gaku TAKIMOTO(U of Tokyo, Agr & Life Sci), Takehiro SASAKI(YNU, Env Info Sci)

草原生態系の生物多様性と生態系機能は、気候変動や放牧などによる人間活動の影響を強く受ける。本研究では、気候変動と放牧に対する草原生態系の応答とそのメカニズムを理解するための数理モデルを新たに構築し解析した。モデルの構築にあたり、草原群集への大型草食者の影響を考察したMilchunasら(1988)による言語モデル(verbal model)の定式化を試みた。数理モデルではMilchunasらのモデルの特徴をふまえ、(1) 植物種の耐乾性と採食耐性が正相関すると仮定し、(2)耐乾性が地上部での競争能力とトレードオフする種群と成長率とトレードオフする種群の2つの植物機能群を考え、 (3)地上部と地下部の競争を分けて定式化した。この数理モデルでは植物群集の多様性は採食強度に対して単調減少あるいは単峰型に応答し、Milchunasらの予測と整合的であった。さらに本発表では、この数理モデルを群集の空間構造と環境の異質性を考慮したメタ群集モデルへと拡張し、群集構成から予測される生態系機能が、群集のα多様性とβ多様性とどう関連するか、また群集の多様性と生態系機能の関係が乾燥ストレスや放牧圧によってどう変化するのかを調べた結果について報告する。
To understand mechanisms underlying grassland responses to climate changes and overgrazing, we developed a mathematical model of grassland plant communities. The model was based on the verbal model by Michunas et al. (1988) and predicted monotonic or hump-shaped diversity responses to grazing pressures depending on aridity. The model was further extended to consider a metacommunity structure, with which we analyzed the relationships between alpha and beta diversity and ecosystem functions and how grazing and aridity affected these relationships.


日本生態学会