| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(口頭発表) H02-03 (Oral presentation)
海岸砂丘は多様な生態系サービスを提供する一方、開発により全国で衰退・消失し、生態系サービスの低下・消失が引き起こされている。北海道石狩市の川下海水浴場も海水浴場整備に合わせ砂丘を除去し、平坦な砂浜が造成された海岸である。ここでは離岸堤設置以降、海岸に隣接した国道や宅地で飛砂害が発生するようになり、対策が求められている。一方、同じ海岸内の残存砂丘、後背地への飛砂防止を目的に堆砂工で造成された人工砂丘では海浜植生による飛砂固定がみられ、被害が軽減されている。よって本研究では飛砂防止対策として砂丘の復元が有効であると考え、伝統的に飛砂抑制や砂丘育成に用いられる草方格(砂面の動きを鎮静化させる格子状の垣)と堆砂垣(周辺の飛砂を抑制し堆積させる垣)を設置し、復元を試みた。復元効果検証にあたり生態系サービスの基盤となる地形や生物群集に着目する必要があるが、構造物設置による経時変化や、複数の構造物の効果を同時に比較した知見は少ない。そこで本研究は構造物設置前後1年間の地形と生物群集の変化を明らかにすることを目的とした。対象地は北海道石狩市の川下海水浴場で、構造物を設置した実験区に4本、残存砂丘に2本、人工砂丘に1本の調査側線を設け、設置前の2021年、設置後の2022年に地形、植生、節足動物群集を調査した。地形調査は各年10月にUAVによる航空写真測量を行った。植生調査は各年5月にベルトトランセクト法で行い、出現種と植生被覆率を記録した。節足動物群集調査は各年7月にピットフォールトラップを設置し、個体数と出現種を記録し、種組成を算出した。設置前後の比較より、草方格区で約45 cm、堆砂垣区で約85 cmの堆砂がみられた。生物群集は微小な変化であったが、比較的草方格区で面的に植生の定着が確認された。構造物設置前後1年間で地形の復元効果を確認できたが、生態系復元は年月を要すると考えられ、今後も継続的な調査が必要である。