| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-07  (Oral presentation)

紀伊山地における生態系サービスと自然資本に関する評価
Assessments of Ecosystem Services and Natural Capital in the Kii Mountain Range

*山本真人(鈴鹿工業高等専門学校), 大野研(三重大学)
*Makoto YAMAMOTO(NIT (KOSEN), Suzuka College), Ken OHNO(Mie University)

Flickrは2004年に開始された、オンライン上で写真の投稿や共有を行うことのできるウェブサイトである。近年、こういったソーシャルメディアを用いた生態系サービスの評価の試みは、様々な場所を対象として行われている。一方、紀伊山地の霊場と参詣道は、太古の昔より信仰の地とされており、生態系サービスのうち、特に文化的サービスが重視されることが推測される。また、過去の研究では、宗教的施設や聖域とされる場所が人々の文化的サービスへの知覚に影響する可能性も示唆されている。それにもかかわらず、紀伊山地の霊場と参詣道を対象とした文化的サービスをはじめとした生態系サービスの評価はほとんど行われていない。そこで本研究では、紀伊山地の霊場と参詣道を対象とし、Flickrにおける写真投稿を用いた文化的サービスの評価を行った。まず、文化的サービスの指標としての使用データとして、紀伊山地の霊場と参詣道で撮影され、かつFlickrに投稿された位置情報付きの写真データを用いた。また、関連する情報として、土地被覆情報(高解像度土地利用土地被覆図:JAXA)を選定した。解析あたってはArcGISおよびMaxentを用いた。ArcGISにより、各土地被覆情報からの距離を求めた。また、Maxentにより、ジャックナイフテストの結果の出力を行い、各土地被覆情報からの距離とFlickrでの投稿写真の位置情報との関係について推定した。これらの解析により、Flickrにおける写真投稿と人工構造物、水域、水田、畑地といった土地被覆との関係性が示唆された。また、常緑針葉樹や常緑広葉樹といった森林ともある程度の関係がある可能性がみられた。このことは、対象地域の文化的サービスの供給には人間の営みがあることが重要ではあるが、同時に森林の存在もある程度関係している可能性を示している。


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