| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-02  (Oral presentation)

日本学術振興会特別研究員の採択率は女性より男性の方が高い【B】
JSPS Fellowship success rates are higher for male than for female applicants【B】

*Daisuke KYOGOKU(Mus Nat Hum Act)

研究助成金やフェローシップの申請書は査読(peer review)により審査される。申請書の採択率は多くの場合に女性よりも男性で高いことが先行研究から明らかになっており、審査過程におけるジェンダーバイアスの存在が示唆される。しかし、先行研究は欧米の助成金やフェローシップを対象としており、他の国や地域での状況はよく分かっていない。本発表では日本学術振興会の特別研究員制度における男女の採択率の差を比較した。採択率はほぼ一貫して女性より男性で有意に高く、調査した5つのプログラム(DC1, PDなど)全てで同様の傾向が見られた。こうしたジェンダーギャップの程度は分野やプログラムにより違いが見られ、分野・プログラムによっては女性応募者の多さと相関が見られることもあった(正の相関も負の相関も見られた)。このジェンダーギャップの原因は不明であるが、審査過程における無意識のジェンダーバイアスが可能性のひとつとして考えられる。今回見られたジェンダーギャップは比較的小さく、これは審査制度がよく設計されているからかもしれない。ただし応募以前にはたらく種々のバイアス(女性応募者の採択率を上げる効果・下げる効果の両方が考えられる)が結果に寄与している可能性もある(例えば応募者に占める女性割合の低さは自己選択バイアスを示唆する)。


日本生態学会