| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-03  (Oral presentation)

科学可視化ツールとしてのサイエンティフィックイラストレーションの制作過程と効果
The Creation Process and its Effectiveness of Scientific Illustration as a Tool for Scientific Visualization

*裘夢雲, 森香織(日本大学 芸術研)
*Mengyun QIU, Kaori MORI(Nihon Univ.)

 サイエンティフィック・イラストレーション (Scientific Illustration, 以下:SI) とは、自然科学の複雑な情報や、言葉で伝えられない概念と思想を精確に可視化するイラストレーションのことである。記録、帰納、表現、伝達などの機能を持ち、サイエンスコミュニケーションのツールとして、研究論文、教科書、博物館などで広く実用されている。
 日本では、SIの需要がたくさんあるが、サイエンティフィックイラストレーターが少ない状況であり、サイエンティストが自らSIを描く場合が多い。そのため、本発表は、制作過程の実例を調査し、各過程とその効果を明らかにすることで、制作をより精確なものにし、応用頻度をより高くすることを期待する。
 『The Guild Handbook of Scientific Illustration』(Hodges, 2003)は、SIの制作過程をまとめた著作である。しかし実際の制作では、制作目的や対象分野や制作関係者により、過程は大きく変わる場合が多い。なぜなら、SIはビジュアル表現だけではなく、科学的精確さが不可欠のため、制作対象と関係ある専門知識や制作対象に対するリサーチや制作者チームの協働なども重要な過程になる。また、SIは自然科学から派生した分野であるため、科学技術の発展とともに制作技法と過程も変化している。
 そこでサイエンティフィックイラストレーターに取材し、生態学及び関係ある分野のSIの実例を調査し、各例の制作過程を比較し、各過程の目的と効果を分析した。
 また、制作前期及び中期に観察が欠かせない作業になっているため、その必要性及び方法について実例の調査結果を報告する。そしてSIの制作のための観察作業と生物学における観察は、両方とも必要だが、目的が異なるため観察の技法と注目点も異なる。その共通点と相違点について調査結果を報告する。


日本生態学会