| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-021  (Poster presentation)

佐渡島と新潟市の沿岸における環境と季節による動物プランクトン動態の変化【A】
Environmental and seasonal changes of zooplankton dynamics in coastal areas of Sado Island and Niigata City【A】

*松谷朱莉, 飯田碧(新潟大佐渡セ臨海)
*Akari MATSUTANI, Midori IIDA(SMBS, SICES, Niigata Univ.)

海岸には様々な底生動物が生息しており、それらの多くは幼生期にプランクトン生活を送る。海岸の底生動物相は環境によって異なるため、プランクトン相も変動する可能性があるが、そのような視点の研究は乏しい。そこで本研究では、動物プランクトン動態の海岸環境と季節による変動を明らかにすることを目的とした。2022年の春、夏、秋の各季節に一回、新潟県佐渡島 (4点) 及び新潟市 (3点) の漁港や砂浜海岸など7定点で、環境調査 (水温、塩分、溶存酸素量 (DO)、クロロフィル濃度 (Chl - a) と表層の動物プランクトンの採集を行った。その結果、水温・DO・Chl – aは季節変動があり、塩分は新潟市の信濃川河口に近い定点で他の定点と比べ低かった。動物プランクトンは、計74のOTU (operational taxonomic unit) 、11の主要な分類群 (門) に分けられた。多様度指数は、全体に春と夏に高かった。動物プランクトンは各回を一つの群集とした。調査定点、季節によってそれらは変動し、多様なカイアシ類が多くの群集で優占した。また、二枚貝類のveliger幼生は夏に、ゴカイ類のNectochaeta幼生は春と夏に集中して出現する季節変動がみられ、有鐘繊毛虫類は新潟市の2定点で春に多く出現した。全群集の類似性をみたところ、全般に佐渡島と新潟市で異なった傾向であった。また、季節によって、類似する定点が異なった。環境要因を合わせて解析したところ、塩分とDOが、群集の類似性に大きく影響していた。出現したOTUの現存量の大小には、それぞれの分類群の生活史や、調査定点における成体の有無による、季節的な消長が関係したと考えられる。本研究は、異なる海岸環境の動物プランクトン動態の変動を明らかにした。本研究の結果は、海岸を含めた海洋生態系の理解や保全につながると考えられる。


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