| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-042  (Poster presentation)

伊那盆地に生息するアカガエル科3種の分布状況および利用する水田と水路の管理方法【A】
Distribution of three true frogs in the Ina Basin and management methods of  paddy fields and waterways used by these species.【A】

*黒田遼(信州大学)
*Ryo KURODA(Shinshu Univ.)

はじめに:長野県南部、伊那盆地の天竜川流域に広がる水田地帯にはアカガエル科に属するツチガエルおよびナゴヤダルマガエル、トノサマガエルが同所的に生息しており、3種はいずれも国または県の絶滅危惧種に指定されている。一方、本地域では特にツチガエルの詳しい分布や環境選好性は未だ把握されていない。本研究では3種のこれらの知見を明らかにすることを目的とした。
方法:鳴き声による予備調査を南北約70㎞の範囲で行い在不在データを記録し、分布状況を把握した。全予備調査の地域の内、水田調査は9地域で行われ、その中の1地域のみで水路調査が実施された。水田調査では夜間に畦を踏査し、個体数をカウント、同時に管理方法の調査として畦構造、畦の草刈り、畦の草丈、非灌漑期の通水、側溝の護岸方法を記録した。水路調査では8水路を選定し、水域に強く依存するツチガエルの個体数を夜間に法面を踏査して個体数がカウントされ、管理方法の調査として護岸方法および水深、水温、底質、水面-法面距離が測定、記録された。
結果・考察:予備調査の結果、ナゴヤダルマガエルは先行研究と同様に、伊那盆地の北部で多く分布が確認され、各分布地が飛び地にあることがわかった。他2種は伊那盆地に比較的広く分布していることがわかった。水田調査の結果と個体数密度からKruskal-Wallis検定を実施したところ、「畦構造物が2辺以上ある場合」と「非灌漑期に通水がある場合」で有意にツチガエルの個体数密度が高くなっていた。前者についてはその要因を明らかにすることはできなかった。本種は水中で越冬することが知られており、これが非灌漑期の通水の有無で個体数密度に有意差がみられた理由であると考えられる。水路調査の結果について重回帰分析を行ったところ、水面-法面距離が短くなるほど、水深が深くなるほどツチガエルの個体数密度が増加する傾向が示された。


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