| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-044 (Poster presentation)
近年、動物の個性と呼ばれる時間や環境が変わっても安定的に維持される行動の個体差の存在が注目されている。海鳥では、リスクをとる傾向の強さを表す大胆さを個性形質として用いることが多い。海鳥を用いた先行研究は、個性形質が採餌行動やつがい形成と関係することを明らかにしてきた。しかし、これらの研究は独立して行われており、個性と採餌行動・個性とつがい形成の両方の関係に注目し、個性と関係する採餌行動の個体差がつがい形成に及ぼす影響を明らかにした研究はない。そこで本研究では、一夫一妻であり長期間の採餌行動が記録可能な育雛期のオオミズナギドリを対象に、個性と採餌行動・個性とつがい形成の2つの関係について調べた。本研究では、自然条件下では遭遇することのない物体を提示した際の個体の行動的反応を記録するnovel object testを用いて個体の大胆さを定量化した。また、オオミズナギドリに小型のGPSロガーを装着することで採餌経路データを取得した。得られた採餌経路データから、個体ごとの採餌場所の忠実度を計算し、個性形質との関係を調べた。採餌場所の忠実度とは利用する採餌場所の一貫性のことであり、忠実度の高い個体は同じ採餌場所を繰り返し訪れ、低い個体は訪れる採餌場所を頻繁に変更することを表す。最後に、つがい関係にある個体の個性の比較を行った。その結果、大胆な個体ほど採餌場所の忠実度が低い傾向にあることが明らかになった。また、個体は自身と似た個性の個体とつがい関係を結ぶ傾向にあることも明らかになった。2つの結果から、つがい関係にある個体は採餌場所の忠実度合いが似ていると考えられる。採餌場所の忠実度の低い個体は探索的に移動する個体であるため、忠実度の高い個体よりも採餌にかけるコストが高いと考えられる。そのため、自身と似た個性の個体とつがい関係を結ぶことは、採餌にかけるコストが自身と同程度の個体と関係を結ぶことにつながると示唆された。