| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-045  (Poster presentation)

カジカガエルの配偶戦略 ーサイズ相関型配偶の適応的意義ー【A】
Mating Strategy of Buergeria buergeri: Adaptive Significance of Size-Correlated Mating【A】

*高橋慶伍, 竹内寛彦(日本大学)
*Keigo TAKAHASHI, Hirohiko TAKEUCHI(Nihon Univ.)

 カジカガエルは河川で繁殖するカエルである.本種では体サイズに顕著な性的二型が見られ,抱接した状態での河川内の移動に有利である可能性が考えられている.一方で,カエル類のいくつかの種類では抱接する雌雄の体サイズ差が大きくなると総排出孔間の距離が大きくなり,受精率が低下することが知られる.従って卵塊の受精率を向上させるためには,抱接する雌雄の体サイズ差を小さくする必要がある.本種の場合,小型メスと大型オスとが番うことで,受精率の向上が可能であるかもしれないが,雌雄の体サイズ差が小さくなることで河川内の移動に不利となる可能性がある.反対に,大型メスと小型オスが番った場合,河川内の移動には有利である一方,受精率は低下するであろう.本研究では,カジカガエルの抱接ペア比(メスの体サイズ/オスの体サイズ)と受精率の関係および野外で番っている抱接ペアの体サイズを調べた.また,抱接ペアの河川内での遊泳能力を定量化すべく,河川内に設置した実験区で抱接ペアの遊泳距離を計測した.その結果,抱接ペア比が1.45以下の時,受精率は100%近くで頭打ちとなったが,1.45よりも大きい場合では,抱接ペア比が大きくなるほど受精率は低下した.また,抱接ペア比と遊泳距離の間には有意な正の相関がみられた.これらの結果から,受精率と遊泳能力は抱接ペア比を介して,トレードオフの関係にあることが示唆された.野外で番っていた抱接ペアの体サイズの間には有意な正の相関がみられ,平均抱接ペア比は1.44であった.実験結果より,抱接ペア比が1.44の時,100%近い受精率を獲得できるとともに遊泳能力を中間的な水準で維持できることが示されたことから,サイズ相関型の配偶戦略をとり,抱接ペア比を1.44辺りに保つことで,受精率および遊泳能力の確保を両立させ,繁殖成功度を高めていることが示唆された.


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