| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-051  (Poster presentation)

PIV粒子画像流速測定による鳥類の翼先端形態と翼端渦の関係の解明【A】【E】
The relationship between avian hand-wing morphology and leading-edge vortices【A】【E】

*姜雅珺(千葉大・院・融), 村山友太(千葉大・院・融), 劉浩(千葉大・院・理), 村上正志(千葉大・院・理)
*Yajun JIANG(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), yuuta MURAYAMA(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), hao LIU(Grad. Sci., Chiba Univ.), masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

飛翔は鳥類を特徴づける性質であり、翼形態は鳥類とって極めて重要な形質である。翼形態の中でも特に翼先端部の形が飛翔において重要であると考えられる。翼先端には「初列風切羽」が並んでおり、その形態は種間で多様であると同時に、飛翔時には各羽根が個別に連動して動くことで多様な機能を生み出している。空気力学的にも「渦」の翼表面からの剥離が翼先端で発生することが知られている。さらに近年、翼先端スロットが空力性能を向上するという仮説が提案されている。さらに、生物が飛翔時に確保すべき機能として「安定性」がある。鳥類は、突風や乱流に対して能動的に翼を操作することなく、翼自体がもつ柔軟性により受動的に安定性を得ている。翼先端の形態は、このような飛翔時の安定性にも寄与すると予想されるが、その機構は全く未解明である。そこで本研究では、多様な生態、分類群を含む15種の鳥の翼標本を用いて風洞実験を行ない、粒子画像流速法(PIV)により観察した。とくに、翼先端部の形態として「翼端スロットの程度」に注目し、種間でのこれら形質、および、飛翔行動の違いと、定常、攪乱時それぞれで翼周辺で生じる渦の形態、渦が生じる場所との対応を検討した。その結果、まず定常時には、翼端スロットでの渦の相互作用が観察され、これが乱れた流れを安定させる効果をもつ可能性が示された。一方、翼端スロットがない翼では翼端前縁渦が横方向に移動して翼の先端まで保たれることが確認された。また、定常・高迎角下で、undulating flight、短距離飛翔の鳥は、主に近端翼で空力性能を保つ一方、羽ばたき飛翔の種は主に遠端翼で渦を安定させることで空力性能を保っている。さらに、高頻度羽ばたき飛翔する鳥では、撹乱下で定常条件より安定した翼表面の渦の流れが観察された。これらの結果から、翼先端の形態と鳥の飛翔安定性の関係を議論する。


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