| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-052  (Poster presentation)

コアラのユーカリ食選択と腸内細菌叢の関連解析【A】【B】
Analysis of the relationship between eucalyptus food selection and gut microbiome of koalas.【A】【B】

*近藤虎太郎(北大・院・環境科学), 村上浩一(鹿児島市平川動物公園), 落合晋作(鹿児島市平川動物公園), 小倉匡俊(北里大学・獣医), 早川卓志(北大・院・地球環境)
*Kotaro KONDO(Hokkaido Univ. Env. Science), Koichi MURAKAMI(Hirakawa Zoological Park), Shinsaku OCHIAI(Hirakawa Zoological Park), Tadatoshi OGURA(Kitasato Univ. Vet), Takashi HAYAKAWA(Hokkaido Univ. Env. Earth)

動物は、消化可能で、毒ではなく栄養になる食物を常に環境から選び続けなくてはならない。こうした食物選択に関連する要因の研究は、採食生態と進化の理解において重要である。オーストラリアのユーカリ林を生息地とする有袋類であるコアラの、ユーカリ食選択に関連する腸内マイクロバイオームについて注目した。コアラは、ユーカリの葉に食を依存するだけではなく、個体や地域によって好むユーカリの種類が異なることが知られている。好みのユーカリを得ることができなければ餓死するという報告があるように、コアラは非常に激しいユーカリの選り好みをする。ユーカリは決して栄養価が高くなく、二次代謝産物を多く含む。コアラにとってユーカリ消化に貢献する腸内共生微生物は欠かせない存在である。腸内共生微生物の総体である腸内マイクロバイオームの組成の個体差は、消化・解毒機能の違いに直結する。このことから、地域特異なユーカリ植生に対するコアラの腸内マイクロバイオームの適応が、コアラのユーカリ選択の地域差と関連していると考えた。本研究では、日本で飼育されているコアラにおいて、ミトコンドリアDNA系統(ミト系統)、腸内マイクロバイオーム、ユーカリ選択行動の関連を分析した。鹿児島市平川動物公園と淡路ファームパークイングランドの丘の飼育個体を対象に、ミト系統解析による由来地域推定、ユーカリ採食データの収集、そして糞便DNA中の細菌16S配列解析に基づく腸内マイクロバイオーム組成の決定をおこなった。その結果、コアラのミト系統が、腸内細菌叢の類似度と、ユーカリ食選択パターンの双方と関連があることが判明した。ミト系統との関連においても、ユーカリ食選択パターンとの関連においても、ある特定の腸内細菌が強く相関があることが示された。以上のように、本研究ではコアラの由来地域と腸内マイクロバイオーム、そしてユーカリ選択の関連性が確認された。


日本生態学会