| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056  (Poster presentation)

コオイムシのアリに対する防衛行動と忌避【A】【B】
Defence behavior and avoidance of Appasus japonicus against ants【A】【B】

*大脇隆聖(九州大学大学院), 立田晴記(九州大学), 大庭伸也(長崎大学)
*Ryusei OHWAKI(Kyushu Univ. graduate school), Haruki TATSUTA(Kyushu Univ.), Shin-ya OHBA(Nagasaki Univ.)

 生物には繁殖を行うとき、親による子の世話(parental care)を行い、子の生存率を高める種が知られている。その中には卵を脚で持ったり体に付着させたりして持ち運ぶ種が存在する。このような行動の適応的意義として、捕食者からの防衛、病原体と寄生からの防御、乾燥、水没、酸素欠乏の阻止などが挙げられる。また、卵を捕食者が少ない場所に移動させることで、卵の捕食リスクを下げることができる。本研究ではトビイロシワアリTetramorium tsushimaeを卵の捕食者と見なし、雄が卵塊を背負って保護するコオイムシAppasus japonicusを用いた室内実験を行った。また、実験室内でコオイムシのアリに対する防御行動の観察を行った。 捕食者のアリがいる足場といない足場がある容器を準備し、卵塊を背負ったコオイムシがどちらの足場に長く滞在するか調べた。また卵塊を背負ったコオイムシとアリを出会わせ、その際に見られるコオイムシの防御行動を記録した。その結果、卵塊を背負ったコオイムシはアリがいる足場よりも、アリがいない足場に長く滞在した。また、アリを振り払う行動やアリから素早く距離をとる回避行動など複数の防御行動が観察された。これらの結果から、卵塊を背負っているコオイムシはアリに対して複数の防御行動を頻繁に行い、アリを忌避することで卵を効果的に防衛していることが示された。今後の展望として卵塊を背負ったコオイムシが野外でも再現されるか確かめる必要がある。


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