| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-064  (Poster presentation)

チョウセンカマキリにおける摂食量と肥満度が性的共食いに及ぼす影響【A】
Effects of food intake and body condition on sexual cannibalism in the praying mantid Tenodera angustipennis【A】

*黒田一樹(神戸大学)
*Kazuki KURODA(Kobe Univ.)

 カマキリやクモでは,交尾時に雌が雄を捕食する性的共食いが知られている.カマキリでは,摂食量が多く肥満度が高い雌ほど雄を誘引しやすく,共食いする傾向が低いことが知られているが,極度に肥満度の低い雌は雄を誘引した上で共食いするという報告もある.よって,雌の共食い頻度と摂食量との関係を把握することは,性的共食いの進化と雄による対抗適応の仕組みを理解する上で重要である.しかし,摂食量と肥満度が性的共食い率に及ぼす影響を定量的に調べた研究は少ない.また,野外での性的共食い率を推定した研究は少なく,野外での肥満度の変動との関連はわかっていない.そこで本研究は,給餌量と給餌間隔が肥満度と性的共食い率に及ぼす影響を実験的に調べると共に,野外での肥満度の変化を調査した.
 まず,給餌量の異なる3段階の処理と,給餌量の多い2段階に給餌間隔の異なる2つの処理を設定した.未交尾雌を羽化から4週間後までそれぞれの給餌処理で飼育し,週3回の給餌直前に体重を測定した.それぞれの体重を体サイズ(前胸背板長)で割った値を肥満度として,給餌量と給餌間隔が肥満度に及ぼす影響を調べた.結果,給餌量が多くなると肥満度は有意に高くなったが,給餌間隔は肥満度に影響を及ぼさなかった.
 次に,得られた肥満度の異なる未交尾雌と雄を用いて,マウント行動と交尾行動,性的共食いの有無を観察し,肥満度と共食い率の関係の統計モデリングを試みた.結果,肥満度はマウント率や交尾率,共食い率に影響はなく,給餌量や給餌間隔も影響を及ぼさなかった.
 さらに,野外集団における肥満度から性的共食い率を推定することを目的として,8月中旬から10月末まで,成虫の肥満度を毎週測定した.結果,肥満度が最も高まった9月中旬以降では,飼育下で最も肥満度の高かった処理よりも肥満度が高いことが示された.


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