| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-078  (Poster presentation)

餌生物や同種個体を用いたグリーンアノールの誘引:人工物による代替可否の検討【A】
Attracting green anoles by bait or conspecifics: testing the effectiveness of fake attractants【A】

*小幡成輝, 佐藤臨, 岩井紀子(東京農工大学)
*Naruki OBATA, Nozomu SATO, Noriko IWAI(TUAT)

 グリーンアノール(Anolis carolinensis)は、小笠原諸島に侵入した特定外来生物である。本種の駆除には、粘着トラップを用いた捕獲が行われている。現在誘引物は使っておらず捕獲効率は高くないが、生き餌や同種生体を誘引物として用いると、捕獲効率を向上できる可能性がある。さらに、生体ではなく人工物によって誘引できれば、コストや労力を抑えられると考えられる。本研究はグリーンアノールに対する誘引効果について、生き餌や同種生体の有効性を確かめるとともに、人工物への代替可否を検討することを目的とした。グリーンアノールに対する餌生物およびその代替物の誘引効果(実験1)と、同種個体およびその代替物の誘引効果(実験2)を検証する2つの実験を行った。実験1では、ケージ内で馴化させたグリーンアノールに、生き餌であるハエ、ハエに似たルアー、もしくはルアーに上下運動を付加したもの、のいずれかを提示し、それら誘引物が設置された筒内への侵入の有無を30分間観察した。その結果、生き餌において誘引効果が認められたのに対して、動きの付加の有無問わずルアーを使用した条件では誘引効果は認められなかった。実験2では、グリーンアノールの生体もしくは模型を取り付けた塩ビパイプと、誘引物無しパイプとを組みにした装置を作成し、小笠原父島の野外に36基設置した。実験装置をカメラで1分または5分おきに写真撮影し、誘引物有りのパイプと無しのパイプに接近した野生個体の数を比較した。その結果、生体、模型ともに誘引効果は認められなかったが、生体に比べて人工物で接近する個体が多い傾向にあった。粘着トラップの捕獲効率を上げるため、誘引物として生き餌を使用することは有効な手段であると示唆された一方で、同種生体の有効性と、人工物への代替可能性を示すことはできなかった。


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