| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-079 (Poster presentation)
砂浜に生息するハマトビムシ科の種は、昼間は砂下に潜り、夜間に砂表面を徘徊して打ち上げ海藻等を消費している。本科が夜行性なのは、温度上昇や乾燥を避けたり、捕食を回避したりするための戦略と考えられている。しかし、ハマトビムシ類の日周活動を詳細に調べた研究は少なく、砂浜での活動域や日周活動の種間での違い、さらに、それらに影響を及ぼす環境要因は良くわかっていない。そこで、本研究では仙台市の砂浜海岸に生息するニホンスナハマトビムシ(Sinorchestia nipponensis)、ヒゲナガハマトビムシ(Trinorchestia trinitatis)、ホソハマトビムシ(Pyatakovestia pyatakovi)を対象に、実験室内と野外調査で日周活動の詳細を観察した。室内実験では明るさや湿度を変え、アクトグラムによる活動を48時間連続観察するとともに、野外調査ではピットフォールトラップを用いた24時間の連続採集を行った。その結果、Sinorchestia nipponensisの昼間の活動量は明るさによって有意に変化し、低光条件下や高湿度条件下では昼間でも活動することが分かった。Trinorchestia trinitatisでも日周活動がみられたが、Sinorchestia nipponensisと異なり、深夜に活動が低下する傾向がみられ、暗条件でも日中の活動量は低かった。野外調査では、3種とも夜間に活動が増加した。しかし、Sinorchestia nipponensisは湿度の高くなる夜間に汀線から離れた場所でも活動がみられたが、残り2種の活動は汀線付近に限られていた。以上のように、日周活動パターンや活動域は種によって異なり、光や湿度が活動の違いに影響を与えていることが示唆された。