| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-093  (Poster presentation)

陸水域の連続性は環境と餌生物の季節変化に対しアカハライモリの採餌量を安定させるか【A】
Does continuity of land-water area stabilize the foraging quantity of Cynops pyrrhogaster to seasonal changes in environment and Prey?【A】

*小川さくら, 吉村謙一(山形大学)
*Sakura OGAWA, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

 生活史において陸水域両方を利用する両生類にとって、連続した陸水域は重要である。先行研究では、繁殖期の移動の際に陸水域が連続する必要性を示すが、より日常的な採餌行動への影響については不明である。各域での採餌量は、餌生物個体数の季節変化や環境変化に影響されるため、安定した採餌量を得るには、環境変化に応じ、陸水域を使い分ける必要があると考えた。また、流水域では常に流速が変化する。河川上流部に生息する両生類にとって、流水環境の変化は陸水の環境選択において重要であると考えられる。
本研究では、連続した陸水域では環境や餌生物の変化があっても、両生類の採餌量は安定し、代謝活動を維持できると仮説を立て、連続した陸水域が両生類の採餌や代謝に影響するメカニズムを解明することを目的とする。
 仮説の検証は野外での操作実験により行った。活動場所が陸/水域のみの制限区(L/W区)、陸水両方で採餌可能な連続区(C区)を調査地内に5か所ずつ設置し、投入前後でアカハライモリの重量、代謝活動の指標として呼吸速度、胃内容物の変化を観察した。同一個体での比較のため、個体識別可能なアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)を対象とした。
 結果、処理間の比較ではL区での採餌量が有意に減少した。W区では、水生昆虫幼虫のような水域由来の生物だけでなく、バッタやチョウ目幼虫など、落下生物と思われる陸域由来の生物も採餌可能であった。加えて、陸域と比べ、水域がある場合は呼吸速度が高かったことから、アカハライモリの採餌や代謝における水域の存在は重要であると思われる。しかし、これらの変数は調査区の設置場所によっても変動し、水域があっても採餌量が少ない個体も存在した。結論として、流速変化は水域の採餌場所としての重要性を変化させる要因となるため、流水環境の変化があるような生息地においては、陸域と水域両方を選択できることがアカハライモリにとって重要であることが示唆された。


日本生態学会