| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-096 (Poster presentation)
集団内の色彩変異が分布の拡大や絶滅リスクの軽減といった種全体の特性に正の影響を及ぼすことが様々な分類群から報告されている。しかしほとんどの場合、色彩変異と性別の関係は考慮されていないため、色彩変異の波及効果に対する性別の影響はよく分かっていない。また、離散的な変異(遺伝多型)に比べて、連続的に変化する色彩変異については定量化が難しく、比較研究が進んでいない。そこで本研究では、日本産フユシャク類を対象に、オスの翅の色彩変異が分布面積に与える影響を調べた。フユシャク類はメスの翅が著しく縮小しているため、オスのみの色彩に着目して解析できる。図鑑に掲載された35種の標本画像を用いて、標本間の非類似度を算出し、種ごとの平均値を色の多様度とした。その後、色の多様度および食草の科数と分布面積の相関を解析した。その結果、色の多様度と分布面積には強い相関関係は見られなかった。一方で、食草幅の広い種ほど分布面積が広かった。以上の結果から、フユシャク類ではオスの色彩変異は種の特性に影響を与えないことが示唆された。オスに正の多様性効果が生じてもメスの繁殖および次世代の生産性には直接寄与しないため、種レベルの動態には影響を与えない可能性が考えられる。