| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-097 (Poster presentation)
林道の脇には集水桝や側溝などが設置され、小さな水たまりが生じることがある。一部の森林棲サンショウウオ類は、そのような水たまりを産卵場所として利用することが報告されているが、定量的な評価は行われていない。本研究では、環境省レッドリストで準絶滅危惧に指定されているトウホクサンショウウオを対象に、林道脇の水たまりが繁殖場所として機能しているのか評価することを目的とした。
調査はトウホクサンショウウオの産卵期である2022年4月から6月に山形県鶴岡市および庄内町で行った。林道脇の水たまりを探索し、卵嚢対数と環境要因(水温、pH、リターの有無、水面から地面までの高さ、森林までの距離、道路の舗装の有無、水たまりの種類(集水桝/側溝/土壌)、水たまりの面積、水深、アカハライモリの個体数)を測定した。また、GISを用いて半径100m以内の森林率を算出した。卵嚢対数を環境要因で説明する一般化線形混合モデル(Generalized linear mixed model; GLMM)を構築し、どのような水たまりで産卵が行われるのか評価した。さらに、卵嚢が確認された水たまりにおいて、トウホクサンショウウオの幼生の上陸前である2022年8月から9月に産卵を確認した場所を再訪し、幼生の個体数を数えた。
林道脇の水たまりを250地点調査した結果、85地点でトウホクサンショウウオの卵嚢が確認された。GLMMの結果から、リターがあり、面積が大きく、道路の舗装がないという条件において卵嚢対数が多くなる傾向がみられた。卵嚢が確認された地点のうち75地点で幼生を調べた結果、20地点では幼生が確認されたものの、56 地点では幼生は確認されなかった。これらの結果から、林道脇の水たまりは産卵場所として利用されるが、多くの地点では繁殖に失敗していることが示唆された。