| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-099 (Poster presentation)
異種間であっても,繁殖に関する形態や行動が類似している場合は互いの繁殖に干渉することがある。そのような配偶に関わる異種間での直接的な干渉を繁殖干渉といい,植物から動物に至るまで幅広い分類群を通して報告されている。異種間で繁殖干渉が生じると,種内での交尾機会が減少するため適応度が低下する。近年,繁殖干渉に注目した研究が盛んに行われているが,これらの多くは異種間での異性間の相互作用に焦点を当てている。その一方で,性選択は,異性間選択(雌による選り好み)だけでなく同性内選択(雄間闘争)もしばしば発生し,雄の武器形質などの進化を駆動する。しかしながら,同性内選択に焦点を当てて繁殖干渉を調査した先行研究は行われていない。本研究では,オオツノコクヌストモドキGnatocerus cornutus(以下,オオツノ)と,その近縁種のコクヌストモドキTribolium castaneum(以下,コクヌスト)を用いて二種間で繁殖干渉が生じるのかどうかを検証した。両種とも穀物貯蔵庫内に生息しており,オオツノの雄には雄間闘争に使用される発達した武器形質があり,コクヌストの雄にはそれがない。そのため,コクヌストの雄はオオツノの雄よりも同性内選択で劣勢であり,繁殖にも負の影響が生じると想定される。実験では,繁殖への影響を評価するために、同種の雌雄ペアと雌雄ペアに異種の雄を加えたときの交尾回数と交尾時間、産卵数と孵化率をそれぞれ比較した。その結果、コクヌストの雌はオオツノの雄が存在すると交尾回数と産卵数が有意に減少し、オオツノの雌はコクヌストの雄が存在しても影響を受けなかった。これらの結果から、コクヌストとオオツノの二種間で繁殖干渉が生じ、コクヌストはオオツノ雄の存在で繁殖成功が減少することが示唆された。この結果から、種内での同性内選択によって進化した武器形質の存在が、異種との繁殖干渉において大きな影響を与えている可能性が示唆された。