| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-100 (Poster presentation)
気候変動の影響は多くの生物種で知られており、鳥類もその例外ではない。気象条件は、鳥類の繁殖成功に影響することが知られている。しかし、このような研究は温帯・亜寒帯地域を中心に行われており、それ以外の地域での情報は限られている。加えて、この影響がどのようなメカニズムによるものか明らかにすることは重要である。天候が繁殖成功に影響を与えるメカニズムとして、熱中症や低体温症などの直接的なものと、悪天候によって親の給餌量が減少することで飢餓になるといった間接的なものが考えられている。そこで本研究では、ヒナの生存・成長と気象条件との関係を検証することで、ヒナの生存・成長はどのようなメカニズムから気象条件の影響を受けるか明らかにした。
研究には沖縄県南大東島に生息するダイトウコノハズクの個体群を用いた。2016年から2021年の間で生死の情報を得ることが出来た806個体のヒナのデータを用いて、一般化線形混合モデル (GLMM) で解析を行った。降水量が多いとヒナの死亡率が上昇することが明らかになった。次に、2016年から2021年の間で20日齢時の形態計測値の情報を得ることが出来た694個体のヒナのデータを用いてGLMMで解析を行った。降水量が多いとヒナの体重は減少し、フショ長も短くなることが分かった。そして、2021年に生死と15日齢時の形態計測値の情報を得ることが出来た79個体のヒナのデータを用いて、構造方程式モデリング (SEM) を行った。降水量が多いとヒナの体重が減少し、間接的に死亡率が増加することが分かった。また、降雨は短期的には体重を減少させ、死亡率を増加させるが、長期的には死亡率を減少させる可能性があることが示唆された。このことから、降水量が多いとヒナへの給餌量が減少して飢餓状態になり、その結果としてヒナが死亡していると考えられた。また、降水量が多いと餌資源量が増え、長期的にはヒナの死亡率を下げている可能性も考えられた。