| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-128  (Poster presentation)

植物-送粉者の関係から探る捕食者 クモ類の花上狩場選好性【A】
What kinds of flowers do spiders prefer for hunting pollinators?【A】

*宇治田京子, 平山楽, 丑丸敦史(神戸大学)
*Kyoko UJITA, Gaku HIRAYAMA, Atushi USHIMARU(Kobe University)

開花植物上に滞在する捕食者は、送粉者を捕食し訪花を妨げることで、送粉者のみならず植物に対しても負の影響を与えることが明らかとなっている。花上の優占的な捕食者はジェネラリスト捕食者であるクモ類であり、クモ類は、送粉者を捕食する、あるいは花上に待機し送粉者に対して忌避行動を促すことで、訪花頻度を下げ結実率の低下といった植物種への影響を生じさせていることが報告されている。植物への影響を考える上で、クモ類の採餌場所の選好性を理解することは、群集内のどの植物種への送粉サービスへ影響を与えているのか把握するうえで重要であるが、多様な植物種から構成される自然群集内でクモ類の植物種選好性を定量的に検証した研究はない。本研究では、クモ類は、群集内でより多く餌を捕獲できる花(植物種)に偏った採餌場所選択をしているという仮説を立て、その検証を行った。具体的には、植物種ごとに繁殖器官(花・花序)に滞在していたクモ類をカニグモ類と造網性クモ類に分類し、同時に、その植物種の送粉者も機能群分けして記録したデータを基に、クモ類の植物種選好性に対する送粉者の訪花頻度や組成、花形態の影響について解析を行った。研究の結果、カニグモ類、造網性クモ類共に訪花する送粉者の訪花が多い植物種に多く滞在していることが明らかになった。また、カニグモ類はハエ目や甲虫類など多様な機能群の昆虫が多く訪花する植物種で滞在している傾向がみられ、造網性クモ類に関しては、このような一貫した採餌場所選好性はみられなかった。さらに、花形態に依存した採餌場所選択はみられないことが示唆された。これらの結果を踏まえて、カニグモ類と造網性クモ類の植物群集内における採餌場所の選好性に対して送粉者や花形質がどのようにかかわっているかを議論する。


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