| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-130 (Poster presentation)
動物による種子散布は、発芽に適した場所に種子を散布するなど、植物に特有の利益をもたらす。付着散布は動物による種子散布のひとつであり、種子が動物の体表に付着することで散布される。周食散布における消化管滞留時間のような明確な移動時間の上限がないため、付着散布は長距離散布に適した散布様式とされる。付着散布を行う植物の種子は、鉤状の構造や粘着質によって、種を限定せず様々な動物種の体表に付着することができる。それにもかかわらず、実際の散布者となりうる野生動物と植物種との間に存在する種間関係は未解明な部分が多い。哺乳類の部分的な毛皮を使用した先行研究では、動物種によって付着する種子量に差が生じるため、体毛の長さや縮れなど、動物種間で異なる体毛の性質が付着する種子量を左右すると考えられてきた。しかし、これらの先行研究では種間の差を生じさせる体毛の性質を特定するには至っていない。また、結実高が高い植物種ほど付着しやすいことも知られているが、大型有蹄類を対象にした調査を根拠にしており、動物の体高と付着種子量との関係は明らかではない。そこで本研究では、6種の中型哺乳類(アカギツネ、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ニホンイタチ、ハクビシン)と3種の付着散布植物(イノコヅチ、チヂミザサ、ミズヒキ)の関係に注目し、付着する種子量に差をもたらす要因を明らかにすることを目的とした。野生動物の体表に付着した種子を直接調べることは困難なため、本研究では対象哺乳類の毛皮で作成した剥製模型を用いて付着調査を行った。対象とした6種の中型哺乳類の模型を野外で走行させ、毛皮に付着した種子を回収、同定した。さらに、動物側の要因として各動物種・各体部位の体毛の長さと植物の結実部と動物の高さの重複度を測定し、付着する種子量に与える影響を調べた。