| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-131  (Poster presentation)

雪解け傾度に沿った高山植物3種の散布前種子食害圧の変化【A】【B】
Variations in the pre-dispersal seed predation intensity of three alpine-plant species along the snowmelt gradient【A】【B】

*鈴木暁音, 工藤岳(北海道大学)
*Akane SUZUKI, Gaku KUDO(Hokkaido University)

 多雪地の高山帯では、植物の生育開始時期は雪解け時期に強く影響される。雪解け傾度に沿って植物のフェノロジーが変化するのに伴い、送粉者との共生関係だけでなく、植食者との敵対関係も変化する可能性がある。例えば、多年生草本のハクサンボウフウ(セリ科)は、雪解け傾度に沿って散布前種子捕食者による食害圧が変化することが知られている。本研究は、この種と同所的に分布する多年生草本キタヨツバシオガマ(ハマウツボ科)とミヤマアキノキリンソウ(キク科)を加えた3種を対象とし、種子食害圧の季節変化パターンを調べた。ハクサンボウフウとミヤマアキノキリンソウは主にハエ目昆虫により訪花され、キタヨツバシオガマではマルハナバチに送粉を依存している。このような送粉者の違いに加え、種子食昆虫の違いによって同所的な種間でも異なる食害圧のパターンを示す可能性が考えられる。
 北海道大雪山系の異なる雪解け環境にある個体群間で、散布前種子食害圧を比較した。ハクサンボウフウとキタヨツバシオガマの開花は、雪解けの早い個体群では7月中旬に起こり、遅い個体群で8月中旬だった。ミヤマアキノキリンソウは個体群間で8月上旬から下旬にかけて開花した。全ての種において、開花の早い個体群で食害圧が高まる傾向が見られたが、雪解け傾度に沿ったパターンは種間差があった。ハクサンボウフウは開花の遅い個体群ほど食害率は低下した。キタヨツバシオガマは開花時期が中程度の個体群で最も食害率が低かった。ミヤマアキノキリンソウは開花の早い個体群と中間の個体群で同程度の食害率を示した。食害圧の季節パターンの種間差を引き起こす決定要因を解明するために、種子食昆虫の組成を調べるとともに、植物の個体サイズや花数等の繁殖形質と食害率との関係性を解析した結果を報告する。


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