| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-133 (Poster presentation)
海鳥は高い飛翔能力で異地間、海陸を繋ぐ能力を持ち、植生改変や付着散布による生物の分散に寄与していると考えられている。海鳥が繁殖地環境に様々な影響を与えることは古くから指摘される一方で、海鳥の営巣行動が繁殖地の生物群集に与える影響に着目した研究はごくわずかである。海鳥の営巣が営巣地の生物群集に与える影響を明らかにするため、小笠原諸島南島において営巣地周辺の植生調査と捕獲調査による体表付着物の調査を実施し、また海鳥巣材内に含まれる種子と無脊椎動物相を明らかにした。植生調査データと各種の営巣数についてRDAにより解析した結果、コウライシバとカツオドリの営巣密度及びナハカノコソウとオナガミズナギドリの営巣密度の間には正の相関が確認された。捕獲調査では、オナガミズナギドリ31個体中13個体にナハカノコソウの種子や小型動物の付着を確認した。海鳥巣材25個からは11種1467個の植物の種子と17種140個体の小型無脊椎動物が出現した。巣材から出現した種子の中には、ケカタバミやナハカノコソウなどの海鳥羽毛への付着が報告されている種子が数種含まれていた。このような巣材中の種子と海鳥の付着種子の対応関係は、巣材の収集や巣材との接触が種子付着の機会を増加させるものであり、海鳥の巣材が種子付着散布の機会を増加させる機能を持つことを示唆する。また小型無脊椎動物群集に着目すると、海鳥巣材内からは陸産貝類や腐食性節足動物をはじめとする多様な無脊椎動物が出現した。この結果は海鳥巣材が海洋島の陸上小型無脊椎動物の重要なハビタットとして機能していることを示唆する。