| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)
植物にとって鳥類は主要な種子散布者であり、果実の色は鳥類が果実を認知する際の重要なシグナルである。鳥類が食べる果実には多様な色が存在し、森林の高木層と低木層の植物では異なる色の果実をつける傾向があることが報告されている。さらに、鳥類が特定の色の果実を好むことが報告されているが、実験的研究は十分ではない。本研究では、鳥類の4色型色覚を考慮し、①日本産の被食散布型植物の果実の色を、紫外線領域を含めて定量化することにより、植物の生活形との関係を調べること、② 異なる色の果実を同時に提示する野外実験により、鳥類の色の嗜好性を検証することを目的とした。日本各地から高木、低木、草本、つる植物を含む281種の果実を採集し、果実が反射する300~700nmの範囲の分光反射率を目的変数としてPGLM解析を行った。その結果、高木種の果実は全波長領域で分光反射率が高く、低木種の果実は赤色光領域のみ高い分光反射率であることが示され、先行研究を支持する結果となった。また、高木種の果実は紫外線領域の分光反射率の高さが顕著であることが新たに分かった。②野外実験を行った結果、十分なデータが集まった全ての鳥類種(ヒヨドリ、メジロ、ウグイス)で異なる色の果実の選択に有意差がみられ、鳥類が果実の色の嗜好性を持つことが示された。これは、鳥類の嗜好性が果実の色に対する一つの選択圧になることを示唆するものである。ただし、果実の色の嗜好性は種によって異なっていた。今回観察された鳥類の森林内での行動範囲は種ごとに異なり、低木層を好む種と高木層を好む種が存在する。鳥類が好む果実の色は、その鳥類種の行動範囲に多く存在する果実の色と一致する可能性がある。また、紫外線を反射しない黒色の果実よりも紫外線を反射する黒色の果実が選ばれる頻度が有意に高かったことから、鳥類が紫外線領域の反射光を採餌のシグナルとして利用する可能性が示された。