| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-143 (Poster presentation)
群集集合は空間と時間にわたる種組成のパターンを決定する重要なプロセスであり、その理解と予測は群集生態学の目標の一つである。しかし、都市生態系における群集集合についてはよく知られていない。特に植物・土壌微生物群集は、都市生態系における生態系機能とサービスの維持に不可欠な役割を果たす可能性があるため、都市におけるこれらの集合プロセスの理解は重要である。そこで本研究では人口減少に伴った増加が予測され、都市の新たな生息地として都市の再編成や植生回復の面での活用が期待される都市の未利用地を対象とし、そこにおける植物・土壌微生物群集の集合プロセスを明らかにした。
調査地は住宅用地として造成された横浜市の未利用地69か所とした。在来種/外来種の植物種組成と機能的多様性の変動に対する局所環境、景観、未利用地の空間構造の相対的重要性を、土壌微生物群集の組成の変動に対する局所環境、景観、未利用地の空間構造、植物種組成の相対的重要性をそれぞれ調査した。
結果、植物群集の種組成と機能的多様性を決定する上で、未利用地の空間構造が最も重要な変数であることが明らかとなり、都市の未利用地における植物群集の集合プロセスが分散制限によって決定されることが示唆された。ただし、外来種の機能的多様性は遍在性が高かったため、その変動を説明する上で未利用地の空間構造の相対的重要性が低くなった。また、外来種の機能的形質が在来種と類似していたことから、外来種は在来種と同様の振る舞いをする帰化種となるために、類似した群集集合プロセスを示す可能性が示唆された。
土壌微生物群集の組成を決定する上で、植物種組成が最も重要な変数であることが明らかとなり、植物の多様性が微生物の多様性に与えるボトムアップ効果を示す結果となった。一方、植物と比較して説明されない変動の割合が高く、その遍在する分散能力のために確率的な群集集合を示すことが示唆された。