| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-144  (Poster presentation)

繁殖様式の異なる日本産ヤナギ属樹種間での遺伝的多様性の比較【A】【B】
Comparison of genetic diversity among willow trees with different breeding system in Japan【A】【B】

*竹谷祐介, 名波哲, 本田明義, 徳本勇人, 吉原静恵, 伊東明(大阪公立大学)
*Yusuke TAKEYA, Satoshi NANAMI, Akiyoshi HONDA, Hayato TOKUMOTO, Shizue YOSHIHARA, Akira ITOH(Osaka Metropolitan Univ.)

無性生殖は、単一の個体から繁殖することで、有性生殖と比べて速やかに繁殖することが出来る。一方で、ほとんどの多細胞生物は有性生殖を行う。しかし有性生殖は、雌のみが個体の増殖に寄与するため、子孫を残すのに無性生殖と比べて2倍のコストがかかる。繁殖様式の異なる生物種の生存戦略を比較することは、生物の性の役割の意義の解明につながる。
本研究は、繁殖様式の異なるヤナギ属植物3種(ジャヤナギ、オオタチヤナギ、アカメヤナギ)の遺伝的多様性を比較した。ジャヤナギは日本では雌のみで生育しており、枝が分岐点で折れやすいことから、無性生殖のみを行っていると考えられる。オオタチヤナギやアカメヤナギは、日本に雌雄が生育していることから、繁殖には主に有性生殖を行うと考えられる。しかし各種の遺伝的多様性の程度や、具体的な繁殖方法については疑問点が多い。
日本全国の対象種の遺伝的多様性を評価するため、青森県馬淵川から鹿児島県川内川にかけてヤナギの葉を採取し、個体間の遺伝的距離を計算した。その結果、ジャヤナギは福島県阿武隈川から愛媛県重信川まで、800km以上にわたる巨大な単一のクローンであることが明らかとなった。ジャヤナギは、現在の環境に適した遺伝子型を持っているため、遺伝的多様性が低いという欠点を補っていると考えられる。オオタチヤナギは小さいスケールでクローンを形成することが分かった。このことから、その環境に適した遺伝子型を持ったオオタチヤナギが、無性生殖で繁殖していると考えられる。アカメヤナギはほとんどクローンを形成していなかった。このことから、アカメヤナギは、遺伝的に多様な子孫を残し、環境変化への適応や病原体への耐性を獲得することで、日本全国に生育できていると考えられる。


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