| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)
侵入に成功した外来植物は在来種より光に対する競争性が高く,天敵解放仮説により繁茂する場合がある.これまで,近縁な移入種により生態的置換が起きた例は多数報告されている.本研究では,外来種の在来種への影響評価と,外来種同士の分布拡散競争における適応性の調査を目的とする.現在,日本にはヤマゴボウ属Phytolaccaが3種分布している.その中で,マルミノヤマゴボウPhytolacca japonicaは在来種であり,ヤマゴボウPhytolacca acinosaおよびヨウシュヤマゴボウPhytolacca americanaは、中国,北米から日本に移入したとされる.マルミノヤマゴボウに対し,ヨウシュヤマゴボウによる生態的置換が起きていた場合,在来種の個体数減少が危惧される.また、中国においても,北米原産のヨウシュヤマゴボウの移入により,中国在来のヤマゴボウの生態的置換が起きている.しかし,ヤマゴボウが日本へ移入した際に原産地での天敵から解放され,新たなニッチを獲得する可能性がある.本研究では、マルミノヤマゴボウやヤマゴボウを対象に,ヨウシュヤマゴボウとの混生地点,非混生地点で株上の開空度,個体密度を計測した.また,ヤマゴボウとヨウシュヤマゴボウの混生地点で約6ヵ月間標識個体の観察を行った.その結果,マルミノヤマゴボウは混生の有無に関わらずヨウシュヤマゴボウより低い開空度地点に生育していた.一方、ヤマゴボウは混生地では非混生地より低い開空度地点に生育した.加えて,低い開空度地点のヤマゴボウは子嚢菌に感染しており,病徴の進行によるとみられる萎凋や枯死があった.これから,侵略的外来種の移入による在来種への直接的なリスクは低いことが示唆された.また,ヤマゴボウは移入先でもヨウシュヤマゴボウによる侵略関係が維持されていることが示唆された.加えて,子嚢菌により,さらに生育が難しくなっていると考えられる.