| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-147  (Poster presentation)

半自然草地における発達段階の異なる群落構成種の生態的特性【A】
Plant ecological trait spectrum and successional stages in semi-natural grassland communities【A】

*後藤田真衣(高知大・理工), 瀨戸美文(高知大・院), 比嘉基紀(高知大・理工)
*Mai GOTODA(Fac. Sci. Tech., Kochi Univ.), Mifumi SETO(Kochi Univ.), Motoki HIGA(Fac. Sci. Tech., Kochi Univ.)

 伝統的な人為的攪乱により維持管理されてきた半自然草地には,その環境に依存して個体数を維持する草原生植物が数多く生育する.日本ではこれまでに,管理放棄された半自然草地では,構成種の組成や種多様性が変化すること,耐ストレス戦略種の出現回数が減少しやすいことは明らかにされている.しかし,半自然草地構成種の生活史戦略性の全体像(耐ストレス戦略種の存在割合)や,群落データに基づく,群落の発達に伴い減少しやすい種の生態的特性は明らかにされていない.本研究の目的は,半自然草地群落構成種の生態的特性を定量的に評価し,群落の発達に伴う構成種の生態的特性の変化と,草原生植物のうち群落の発達に伴い減少しやすい種の生態的特性を明らかにすることである.高知市皿ヶ峰のネザサ型半自然草地において,低茎ネザサ群落,高茎ネザサ群落,ネザサ-低木混生群落,樹木群落で植生調査を実施した.出現種の生活史戦略性(競争戦略性,耐ストレス戦略性,荒れ地戦略性)と生活型を調べ,半自然草地構成種(以下,草地植物)と草原生植物の生態的特性別の種数と存在量(CWM)を群落間で比較した.その結果,草地植物・草原生植物の生活史戦略性は,種数・CWMともに耐ストレス戦略種が圧倒的に多かった.草地植物は,小型地上種,根茎を横に広げる種,栄養繁殖型種のCWMが,高茎ネザサ群落への発達に伴い増加し,樹木群落への発達に伴い減少した.動物散布種,微小地上植物は樹木群落への発達に伴い増加した.これらはネザサの優占度を強く反映しているものの,群落の遷移も反映していると考えられる.草原生植物のうち,種数では耐ストレス戦略種,分枝型種,重力散布種が,CWMでは荒れ地耐性,叢生型種が群落の発達に伴い減少した.このことから草原生植物のうち群落の発達に伴い減少しやすい種は,荒れ地戦略性の高い耐ストレス戦略種,分枝型・叢生型種,重力散布種であると明らかになった.


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