| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-149  (Poster presentation)

空間構造としての植生境界は植物の多様性に貢献するか【A】
Do vegetation boundaries contribute to plant diversity as spatial structures?【A】

*新田紗也, 小池文人(横浜国立大学)
*Saya NITTA, Humito KOIKE(Yokohama National Univ.)

道路と草原の境界、裸地と草原の境界などの「境界部」は特殊な環境である。個体の葉の片方が舗装や裸地、他方が植生側にあるような「境界」に生育する植物に包括的に着目した草地の研究例は少なく、境界の空間的構造が多様性に与える影響は不明である。本研究は「境界」に特徴的に出現する種の検出を試みその生態特性を調べた。植生境界に直交する1mのラインを引き、中心(50cm)を境界にあわせた。ライン上を10cmおきに区切り、出現した植物種を記録した。境界から植生内10cmを「境界」とし、それより奥を「植生内部」とした。調査は生物季節(田中・小池、2011)ごとに行った。また、ライン上に出現した各植物種の生態的特性に関するデータを収集した。解析では目的変数を10cmごとの植物種の出現の有無、説明変数を「境界」であるか「植生内部」であるかとしたロジスティック回帰分析とRstanによる出現確率のベイズ推定を行った。また、十分なデータが得られた調査回について、目的変数を境界への有意な出現の有無、説明変数を生態的特性に関するデータとしたロジスティック回帰分析により、種ごとの生態特性と境界への出現傾向との関係について調べた。結果としては、岩石海岸の一次草地では海岸固有種(ボタンボウフウ、ハマカンゾウなど)や河原・半自然草地の種(テリハノイバラ、ノコンギク)などの保全対象となり得る種の境界での有意性が検出され、境界が多様性に寄与することが示された。生態的特性に関しては、半自然二次草地や一次草地において、地表を這う種や花期が春と秋の種、背が低い種の保全には境界が重要となる可能性が示された。さらに、一次草地においては寿命が短い種、葉が厚い種の保全に境界が重要となる可能性が示された。


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