| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-153  (Poster presentation)

オオカメノキの外部形態の地理的変異【A】
Geographic variation in the external morphology of Viburnum furcatum Blume【A】

*鶴啓太郎, 高津柊大, 中川弥智子(名古屋大学)
*Keitaro TSURU, Shuta TAKATSU, Michiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.)

植物がもつ様々な外部形態は、その種の植物の資源獲得競争、生存および繁殖に対する戦略を表す。外部形態は同一種内でも生育環境によって異なり、標高は外部形態の差異をもたらす要因の一つである。ガマズミ科のオオカメノキは、標高50~2500 mと幅広い標高帯に生育していることから、本研究では標高の異なる地域間におけるオオカメノキの樹高、葉および花の外部形態の差異を明らかにすることを目的とした。
調査は、愛知県の海上の森(標高120~180 m)、面ノ木原生林、名古屋大学稲武フィールド(いずれも1000~1100 m ; 面ノ木と稲武は同一の調査地域とした)および岐阜県と長野県に跨る御嶽山(1800~1900 m ; 以下、御嶽)の3地域で行った。2022年の春~夏にかけて各調査地域の29~39個体について、樹高および胸高直径(DBH)を測定し、葉と花序を採取した。採取した葉から比葉面積(SLA)、葉乾物含有量(LDMC)、厚さおよび窒素含有量を算出・測定し、採取した花序から装飾花と稔性花の数および面積を測定して地域間で比較した。
DBHに対する樹高は御嶽で他の地域より低い傾向を示した。御嶽では積雪が多いことから、伸長成長が抑制され、DBHに対する樹高が低くなったのかもしれない。葉の厚さと窒素含有量は標高の増大に伴って増加し、SLAとLDMCは高標高で低下した。葉の厚さは先行研究でも同様の傾向が見られ、気温低下がもたらす葉の凍結を防ぐためと考えられる。また、標高の上昇により植食者が減少する傾向があるため、葉への窒素投資が可能となり、高標高地域ほど窒素含有量が大きくなったのかもしれない。SLAは日射量の増加に伴い減少するため、高標高地域では日射量の増大によりSLAが減少した可能性がある。装飾花と稔性花の数は地域間で差が見られなかったが、その面積は地域間で有意に異なった。花のディスプレイサイズは送粉者相やその個体数に影響を受けるため、地域間で異なるオオカメノキの送粉者が花の外部形態に影響を及ぼしているのかもしれない。


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