| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-155 (Poster presentation)
ヤマザクラ(Cerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) H. Ohba var. jamasakura)は日本に生育する野生のサクラ類を代表し、江戸時代末までは、花見の対象は主にヤマザクラであった。近年、二次林の管理放棄と成熟林化が生じてあり、ヤマザクラの生育状態にも変化が起こっていると考えられる。ヤマザクラの生育状態の研究としてはこれまで根系分布と樹木活力度および土壌硬度の検討(今西ら 2009)、ヤマザクラの開花に対する立地環境と周辺競争木の検討(田端 2020)などの先行研究があるものの、ヤマザクラの生育については未解明な部分が多い。本研究ではアカマツ林に自生するヤマザクラ個体の空間分布と環境条件との関係を調査し、ヤマザクラの生育立地について明らかにすることをめざした。
本研究は岡山県真庭市の鳥取大学教育研究林「蒜山の森」で行った。第二次大戦後に成立したアカマツ林に80×100 mの毎木調査プロットを設置し、10×10 mの小プロットに分割した。
プロット全域では胸高直径3.0cm以上の樹木として39種1168本を確認した。その中で、ヤマザクラ、リョウブ、アカマツ、ウワミズザクラ、コナラ、アオハダ、ウワミズザクラが幹数、胸高断面積合計とも上位を占めた。上位樹種とヤマザクラの空間分布の関係をL関数を⽤いて解析した結果、すべてランダム分布であった。また、小プロット内の土壌表面硬度、土壌表層含水率、開空率、斜面の傾斜量、林道からの距離などの各項目を調査し、一般化線形モデルを用いて小プロット内のヤマザクラ幹数に与える影響を解析した。この結果、土壌表面硬度と斜面の傾斜量の影響が検出された。以上のことから、ヤマザクラの分布には他の主要樹種との明確な競争の結果はみられず、特定の斜面と土壌硬度が硬い地形がヤマザクラの形成しやすい影響している可能性がある。