| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-164 (Poster presentation)
森林内において光獲得量は樹木の成長速度を規定する重要なパラメーターである。高く複雑な森林構造を持つ熱帯林では林内の空間的な位置により光の供給量が異なり、共存個体がどのように光を獲得し、成長しているかはわかっていない。そこで、本研究は熱帯林の光の三次元分布を測定し、樹木の光獲得量を計算することで、共存個体間の光獲得量と成長の関係性を明らかにすることを目的とした。
本研究はパナマのParque Natural Metropolitano内の1 haの熱帯季節林サイトにおいて、40 m×40 mのプロットを2か所設置し、林冠クレーンを使い、光の三次元分布の測定と毎木調査を行った。光の測定は5 m×5 mの各サブプロットの中心にて地表面から林冠上まで1m毎に測定した。毎木調査は胸高直径(DBH)5 cm以上の樹木のプロット内座標、胸高周囲長(GBH)、樹冠形状と位置、樹高を記録した。GBHと構成樹種の既知の材密度から現存量を推定し、過去5年のDBHデータを用いて成長速度を計算した。毎木調査で得られた樹冠形状・位置データを、光の三次元分布に重ね合わせ、各個体の光獲得量を計算した。成長速度は光獲得量と光利用効率(LUE)の積の関数として解析し、熱帯林における共存樹木の成長や光利用戦略、また常緑樹と落葉樹の違い(落葉性)による影響を調べた。
光獲得量と成長速度は樹高に伴い有意に増加したが、落葉性による違いはなかった。一方、LUEは樹高に伴い有意に減少し、落葉樹で回帰切片が有意に高かった。よって、現存量あたりの光獲得量は落葉性による違いはないが、LUEは落葉樹でより優れていた。また、光獲得量と樹高、成長速度と樹高の関係のそれぞれの残差から、水平方向の光強度の不均一性による成長速度への影響を解析した。これらの残差は正の相関を示し、特に落葉樹の成長量の違いをよく説明した。本研究は、熱帯季節林の光の垂直・水平方向の不均一性において、共存する常緑樹と落葉樹の成長様式の共通点と相違点を明らかにした。