| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-172 (Poster presentation)
精子や卵といった性別間で配偶子サイズが異なる異型配偶子接合は雌雄差の起源であり、同型配偶から進化したと考えられている。理論的には、配偶子密度が低い場合、雌雄配偶子のサイズ差(異型度合い)が大きくなりうると考えられている。また接合できなかった配偶子が単為発生する場合、大きい同型配偶が進化的に安定となることがあり、単為発生は雌雄配偶子の異型度合いに影響する可能性がある。海産緑藻エゾヒトエグサは潮汐変動を利用した配偶子の同時放出により接合効率を上げている。接合できなかった配偶子の一部は単為発生することもできる。潮汐変動の極めて小さい環境ではこの配偶子同時放出の仕組みは上手く機能せずに接合効率の低下と、それに伴う単為発生機会の増加が予想される。このため接合効率に関わる環境の違いにより同種内でも雌雄配偶子の異型度合いが異なるかもしれない。また、多くの雌雄配偶子が単為発生により生存すると、雌雄配偶子サイズはともに大きくなるように進化する可能性がある。本研究では、潮汐変動が大きい北海道室蘭市と潮汐変動が極めて小さい小樽市の集団に着目し、集団間の配偶子サイズを比較した。また配偶子が単為発生のみ行った場合の最適配偶子サイズを予測して、実測値と比較した。配偶子放出のタイミングを調べると、小樽集団は接合効率が低い可能性が示唆された。集団間の配偶子サイズの比較では、雌では小樽集団の方が大きかったが雄で違いは見られず、雌雄配偶子の異型度合いは小樽集団の方が大きかった。配偶子が仮に単為発生のみ行った場合の最適サイズの予測では、実測値は推定値よりはるかに小さいことが示唆された。以上の結果から接合効率に関わる環境の違いは異型度合いの進化に影響を与えている可能性が示唆された。