| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-178 (Poster presentation)
【導入】植物は組織ごとに異なる微生物叢を形成し、これまでに葉圏や根圏を中心に植物微生物叢が研究されてきた。しかし、種子・花には微生物がほとんどいないとされ、あまり目を向けられてこなかった。その中でも種子の微生物叢は、植物個体の微生物叢の出発点として、その後の成長・繁殖に影響を与えることが予想される。近年、種子内部には微生物叢が普遍的に存在することが明らかになってきており、知見が蓄積されつつある。しかし、これらの先行研究では、複数の種子をまとめて解析しており、個々の種子微生物叢の特徴を見落としている可能性がある。また、種子微生物叢の形成過程についてはさまざまな議論がある。その一つに、花から種子に微生物が伝播することが報告されているが、微生物叢全体に影響を及ぼすかは明らかになっていない。
本研究では、野生樹木アカメガシワの種子細菌叢を1種子単位で解析し、その組成、多様性、量の関係を検討した。また、野外で開花期の花序に細菌の接種実験を行い、種子細菌叢の変化を解析した。
【材料・方法】滋賀県大津市に自生するトウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japoncus)の種子を用いて、16S rRNAのアンプリコン解析による細菌叢の組成と多様性の評価や、qPCRによる細菌量の推定を行った。
次に、開花期の花序に細菌の接種実験を行い、人工的に花上微生物叢を変え、種子細菌叢への影響を調査した。種子から単離培養した細菌3種類(細菌P: Pantoea属, 細菌S: Sphingomonas属, 細菌R: Robbsia属)を、それぞれ別の花序に接種した。その後、採取した種子の細菌叢の処理間比較を行った。
【結果・考察】アカメガシワの種子細菌叢の量や組成は種子間で変動し、特に個体間の変動が大きかった。この変動は多様性や細菌量と対応していた。
接種実験の結果、細菌P、細菌Rは種子細菌叢で増加し、細菌量の増加や組成が変化した。このことから、花上微生物叢の変化は種子内微生物叢に影響を与えることが示唆された。