| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-179  (Poster presentation)

近縁外来種と同所的なカタバミ集団の外来花粉への耐性【A】

*星野佑介(東京学芸大学), 堀江佐知子(東北大学), 牧雅之(東北大学), 堂囿いくみ(東京学芸大学)
*Yusuke HOSHINO(Tokyo Gakugei Univ.), Sachiko HORIE(Tohoku Univ.), Masayuki MAKI(Tohoku Univ.), Ikumi DOHZONO(Tokyo Gakugei Univ.)

異種花粉の受粉は,胚珠のロスや同種花粉の受精の阻害をもたらし,植物の適応度を低下させる。しかし,近縁種と同所集団の個体(異種花粉を高い頻度で受粉しやすい)では,単独で生育する個体よりも異種花粉を受粉した時の負の影響が小さく,耐性を獲得する可能性が知られている。カタバミ(Oxalis corniculata,以下在来種)は近縁外来種オッタチカタバミ(O. dillenii,以下外来種)との交雑で不稔な雑種を形成し,種間の花粉移動によって繁殖干渉が生じる可能性が報告されている。外来種との同所集団の在来種には,外来花粉に対する耐性があるのかを明らかにするため,単独2集団,同所3集団の在来種を対象に以下の実験を行った。
(1)予想:外来種と同所集団の在来種は雑種種子形成率が低い。各集団において,在来種内交配と在来種×外来種交配を行った。その結果,雑種種子の形成率は低く,さらに同所集団の個体で顕著に低かった。よって,同所集団の在来種は,雌側が外来花粉を認識し,受精を阻害していると考えられ,雌機能による耐性がみられた。
(2)予想:同所集団の在来種の胚珠または花粉は,外来花粉と混ざって受粉しても同種種子形成率は低下しにくい。各集団において,在来種に混合花粉交配(在来+外来)を行った。混合花粉中の在来花粉には,単独集団由来または同所集団由来の花粉を使用した。その結果,胚珠または在来花粉が同所集団由来である時,形成される在来種子の割合が低下しやすいことが明らかとなった。よって,予想とは逆に,同所集団に由来する胚珠または花粉親が関与する交配では同種交配が阻害されやすく,耐性は検出されなかった。在来花粉が柱頭へ付着後,受精までの間に,在来花粉が外来花粉の影響を受けている可能性が示唆された。同所集団の在来種は,外来種によって繁殖が制限されており,結果的に2種の共存(同所性)が成立している可能性が考えられた。


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