| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-183 (Poster presentation)
都市部における人工地面積の増加は、植物の生育地の改変・分断化を引き起こす。近年、都市での生育地分断に対する植物の適応進化がみられることを示唆する研究が増加している。特に、風散布植物においては生育地の分断化によって種子散布形質に変化が見られることが知られている。
一般的に生育地分断の影響を受け、限られた範囲の生育地に分布する植物においては、種子散布能力を低下させることで限られた生育適地に種子を散布することが適応的とされる。例えば、種子に冠毛をつける風散布植物であるフタマタタンポポでは、都市における生育地分断に対して冠毛を持たない非散布種子を増加させる応答を示すことが先行研究によって報告されている。一方で、人工地環境下においても生育地分断の影響を受けずに分布を拡大している種が存在する場合、これらの種では都市域で散布能力を低下させないことが予測される。
本研究では、以上の予測を阪神都市圏の水田と都市緑地の計10地点において、都市-里山間で同所的に共存するオニタビラコ2亜種を対象に検証した。オニタビラコの2亜種として、都市域で優占度が低いことが定性的に知られているアカオニタビラコ(Youngia japonica subsp. elstonii)と都市域で優占度が高いことが定性的に知られているアオオニタビラコ(Youngia japonica subsp. japonica)が存在しており、これらの2亜種は種子に冠毛を持つ風散布植物である。本研究では都市化が2亜種の分布と種子散布形質に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。2亜種の分布として、各調査地の中心から半径250m圏内の2亜種の生育地を記録、種子散布形質として、種子の冠毛長、種子長、種子幅を測定し、各調査地点の中心から半径1km圏内の人工地面積の割合を算出した各地点の都市化度との関係を解析した。
本発表ではこれらの結果を踏まえて、2亜種の都市-里山間における、分布の実態と形質の差異の共通点と相違点について議論する。