| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-185 (Poster presentation)
雌雄異株植物は、両性植物と比べて送粉や種子散布の機会が制限されるため、有効集団サイズが小さくなり、集団の維持に不利であるといわれている。一方で、必ず他殖によって種子を作ることから、近親交配を回避しやすく、集団の遺伝的多様性が高くなる可能性がある。本研究では、雌雄異株性が近親交配の回避や遺伝的多様性を高めることに貢献しているかを様々な系統の植物で検証した。
調査は日本で広く分布する雌雄異株植物19種と両性植物18種を対象に行った。各種1~5サンプルを西日本の様々な地点で採取し、MIG-seq法でSNPsを取得した。遺伝的多様性の指標として、近交係数FISと塩基多様度πを計算し、各種の性表現(雌雄異株、両性)、生活形(草本、低木、高木、木本性つる、草本性つる)、種子散布様式(重力、動物、風)、送粉様式(虫媒、風媒)が遺伝的多様性に影響しているかをPGLM解析で調べた。
モデル選択の結果、FISには、サンプルサイズが影響していた。サンプルサイズの次に影響のある説明変数として性表現が選ばれ、両性植物は雌雄異株植物よりFISが高かった。また、虫媒植物よりも風媒植物の方が高かった。さらに、重力散布>風散布>動物散布の順、草本>木本性つる>低木>草本性つる>高木の順で、近親交配の傾向が強かった。πの説明変数としてサンプルサイズ・性表現・生活形・種子散布様式が選ばれ、雌雄異株性・草本・風散布でπが高くなっていた。
本研究の結果、雌雄異株植物が近親交配を回避していること、雌雄異株植物の遺伝的多様性が高いことが分かった。遺伝的多様性が高くなるという利点は、一般的に不利であると考えられる雌雄異株性が様々な系統で見られることの理由であるかもしれない。