| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-186 (Poster presentation)
植物における向日性とは、太陽の方向に反応して、植物が自身の器官を太陽方向に向ける動きを指し、花茎の運動により花にも向日性は観察される。
ハマビシTribulus terrestris(ハマビシ科)は、熱帯から温帯の海岸や内陸の乾燥地に生育する地表型の一年生草本である。日本では海岸部や海岸近くの砂地などに生育し、7月から10月にかけて開花期を迎え、1cmほどの1日花を咲かせる。これまで、昼には閉花を開始することが観察されているが、本発表ではさらに向日性、および訪花昆虫との関係を検討した。
現地調査の結果、花はおおよそ午前7時半から開花し、午前11時ごろには閉じ始め、昼過ぎには半開の状態となった。この開花運動は複数の調査地で見られ、開花期の最盛期でも終盤でも同じような開花特性を示した。ハマビシの花が開花してから閉じ始めるまでをタイムラプス撮影し、花の向きを算出し、太陽の方向と比較した。その結果、晴天時では、開花直後の花の向きは太陽の方向に近く、ハマビシは開花時に花を太陽方向に向けることが示唆された。また、昼近くになると太陽の方向と離れる傾向が見られ、5枚の花弁のそれぞれが内側に閉じるように丸まっていくのが観察された。その後、花弁と共に蕊が脱落した。こうしたハマビシの花の挙動は、開花直後の短時間内で向日性を示すと考えられる。
さらに、向日性が植物に繁殖上の利益をもたらすことを示唆した研究が、極圏や高山帯で知られており、今回、訪花昆虫を調査した。遺伝的解析では変異がなく、自家受粉率は算出できなかったが、訪花昆虫にハマビシの花粉が付着していたことから他花受粉の可能性もあり、今後、向日性との関連を検討していく。