| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-188  (Poster presentation)

落葉広葉樹10種の葉・枝幹・根の機能形質の多様性【A】
Relationship among functional traits of leaf, stem and roots of ten deciduous tree spicies.【A】

*谷口みか, 大西未来, 井口こころ, 上田実希(日本女子大学)
*Mika TANIGUCI, Miku ONISHI, Kokoro IGUCHI, Miki UEDA(Japan Women's University)

 植物の葉・枝・根の様々な特性は成長戦略を反映している。葉の経済学的スペクトラムにより形質間、形質と機能との関連性が明らかになっており、植物機能形質を成長戦略の指標とした。葉においてはLMAが競争的・保守的な成長戦略を表す機能形質の1つである。植物の機能の測定結果の解析が世界中で行われているが、多くの研究例が地上部に集中しており、野外での調査が困難な地下部を含めた研究例は少ない。そこで、本研究ではポット栽培の苗木を材料として、地下部も含めた部位ごと(葉・枝幹・根)の形質を調べることにより、保守的な種と競争的な種がそれぞれどのような成長戦略を取っているのかを明らかにすることを目的とした。落葉広葉樹9科10種を用いてバイオマスが最大となる8月に採集し、各形質や化学特性を測定した。本研究で用いた 10 種の落葉広葉樹の LMA は、50.45~85.82 の間の値を示し、1つの機能型の中でも多様な成長戦略を含む種で構成されていた。LMA が大きい種ほど、個葉枚数、個体当たりの枝幹重量、個体重に占める地上部重量の割合が有意に小さくなり、個体あたりの枝幹重量が小さくなる傾向が見られ、個葉重量は有意に大きくなった。地下部では、LMA と個体当たりの根重量の間には正の相関が検出された。LMA が大きい保守的な種は面積の大きい葉を少数作り、枝幹を軽くすることにより、地下部へ多くバイオマスを配分していることが分かった。反対に、LMA の小さい競争的な種は効率よく光合成を行う為に、面積の小さい葉を多数に作り、枝幹を大きく成長させることにより、地上部へより多くのバイオマスを配分していた。またこの結果はフェノール濃度と同様の結果を示しており、このことからフェノール濃度が成長戦略を表す指標の1つであることが分かった。さらに、相互関係を各部のパラメーターや非構造炭素や防御物質などの化学的な観点から解析した結果を紹介する。


日本生態学会