| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-195 (Poster presentation)
根部共生真菌は、宿主植物へ養水分を供給することをはじめとした相互作用により、宿主の陸上という厳しいストレス環境における生育を支えている。森林生態系においては、こうした真菌は宿主植物の影響を受けて地下部での分布を変化させながら、周囲の植物と相互作用している。この植物―土壌フィードバックと呼ばれる現象は、実生などの植物の密度を変化させるため、森林生態系の動態を理解するうえで重要である。しかし、植物―土壌フィードバックと密接に関係する根部共生真菌の空間分布を、詳細に扱った研究例は少なく、根部共生真菌の分布要因の理解は十分でない。
そこで、本研究において、長野県菅平高原の森林内の126地点から採取した植物根と土壌に対して、真菌を対象としたメタバーコーディングを行い、合計2592個の植物根と126個の土壌の真菌群集組成を明らかにした。そして、得られた群集組成を用いて、Joint Species Distribution Modeling (JSDM)による根部共生真菌の分布に対する、宿主植物、土壌真菌群集、空間自己相関、根部での真菌間関係という4要因の説明力を、モデルの決定係数に基づき比較した。また、これらの要因の中で、根部における真菌間関係に着目し、他の真菌に与える影響として、各真菌の他の真菌との共起関係と、その相手の分布に対する真菌間関係の説明力の間の相関関係を評価した。
この結果、比較した4要因の中で、森林地下部における根部共生真菌の分布に対して、根部における真菌間関係による影響が最も大きかった。他の真菌に与える影響に関する解析では、対象とした真菌のうち、9 OTUのみが、ほかの真菌の分布と強い関係を持っていた。また、これらの真菌の中で、内生菌と考えられた4OTUは、自身も他の真菌との関係性からの影響を強く受けていた。
これらのことから、根部共生真菌の分布は、多数の真菌間の関係のもとで決定しており、その中で、一部の内生菌が中心的な機能を持っている可能性が示唆された。