| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-196  (Poster presentation)

カエデ属2種の生育段階依存的な枝軸長変化のメカニズム【A】
Mechanisms of life-stage dependent changes of shoot length in two maple species【A】

*藤岡薫子(東大院・新領域), 久本洋子(東大千葉演習林), 鈴木牧(東大院・新領域)
*Yukine FUJIOKA(GSFS, U-Tokyo), Yoko HISAMOTO(UTCBF, U-Tokyo), Maki SUZUKI(GSFS, U-Tokyo)

 木本植物は個体成長に伴って成長段階から繁殖段階へ移行する。昨年度は北海道大学苫小牧研究林クレーンサイト(成熟林)における枝軸伸長量の観測結果から,イタヤカエデは光環境の変化に対応した急激な成長速度変化を伴って繁殖段階へと移行し,オオモミジは光環境とは無関係に,個体サイズに依存して繁殖段階へと移行すると考察した。しかし同一林分内では通常個体サイズと光環境が連動しており,それらの効果を分離できない。そこで今年度は,同研究林の二次林サイトでも足場を用いた観測を行い,両サイトにおいて樹冠先端部の枝群の当年枝軸長,個体サイズ(樹高,胸高直径),光環境(PPFD,R:FR,青色光),開花率(枝群,個体)を計測した。生育段階の異なる林分のデータを併用することで,光環境と個体サイズの効果を分離し定量した。各個体の当年枝軸長の中央値を目的変数,それ以外のパラメータを説明変数,サイトをランダム効果として回帰モデルを構築し,モデル選択を行った。その結果,イタヤカエデでは個体サイズが,オオモミジでは枝群の開花率が,当年枝軸長の決定要因として選択された。一方で,枝群の開花率を目的変数とし,個体サイズと光環境を説明変数,サイトをランダム効果としてモデル選択を行ったところ,イタヤカエデでは光環境が,オオモミジでは個体サイズが説明変数として選択された。以上の結果から,イタヤカエデでは,当年枝軸長すなわち樹高成長速度の変化は個体サイズの変化に起因しており,個体の繁殖段階への移行は光環境の変化に起因する別の現象であるが,同一林内では樹高の閾値と光環境の変化する樹高がほぼ一致するため,成長量の変化と開花が同調してみられると結論した。一方オオモミジでは,個体サイズによって開花量が決定され,開花量によって当年枝軸長が決定されており,これは個体レベルでの観察結果とも一致した。発表では糖や窒素といった個体内資源量の影響についても検討する。


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