| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-205 (Poster presentation)
野外における気孔コンダクタンス(以下gs)の変動の予測は、陸域生態系の炭素固定や水・熱循環を評価する上でとても重要である。gsの変動には、光、飽差、温度、CO2濃度、土壌水分といった物理的(環境)要因に加え、植物の概日リズムや個体間の遺伝的差異、個体内での順化といった生物的要因が複合的に作用している。現在、gsの予測に用いられているモデルの一つであるJarvis型モデルは、潜在値gsmaxに対して、要因Xへの応答を関数f(X)として掛け合わせるものである。これは、各要因について経験的に知られた生理学的応答を反映できるうえ、説明変数の取り替えが容易なことから、決定係数R2によりその変数の重要性を議論しやすいという利点がある。
本研究では一例として、コナラQuercus serrata若木群落に対し、gsの日変化に影響する要因をJarvis型モデルを用いて解析した。日変化においては、光(Q)と飽差(D)が強い要因であることが知られている。一方で、QとDのみでは説明できない残差のうち、本研究ではまず、時刻(t)に依存して影響の大きさが変わる効果に注目した。この効果には概日リズムなどの要因が含まれていると考えられる。QとDのみのモデルでは、モデルが朝夕にgsが過大評価となる傾向が見られたため、これをもとにtの関数f(t)を作って掛け合わせた。R2はQとDのみのモデルで57%であったが、tの関数で10 %上昇した。次に、個体、個葉を階層的にランダム変数として考慮すると、それぞれ14 %、4 %上昇した。よって本観測のコナラ群落のgsの日変化においては、光と飽差に加え、概日リズムや個体・個葉における遺伝的差異や順化の効果も重要だったといえる。今回は1種、1日分のデータしか用いてないことから、今後は多種や複数日のデータによる一般化を行いたい。