| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-210 (Poster presentation)
多種共存群集の一つである森林では、上層と下層、暗い閉鎖林冠下林床と明るいギャップなど複雑な光環境の不均一性があり、光環境への適応の違いが多種共存をもたらす機構の一つだと考えられている。常緑種と落葉種、高木種と低木種はそれぞれ異なる光利用戦略を持つと予想されるが、展葉・落葉や枝の伸長のタイミングといった樹形フェノロジーの種間差や、生育初期段階における高木種と低木種の光応答の違いに着目した研究はほとんどない。そこで本研究では、以下の仮説を立て、光利用戦略の種間差の理解を深めることを試みた。
1. 樹形フェノロジーに種間差があるため、受光量・光獲得効率が最適化される時期に種間差がある。高木種はやがて林冠に達するため、林冠木と同じく林冠の葉がある時期(夏)に受光量・光獲得効率が最適化される。それに対し低木種はずっと下層に生育するため、林冠の葉がない時期(春、秋)に最適化される。
2. 落葉種は夏に最適化され、常緑種は春か秋に最適化される。
3. 高木種は将来高くなるために、稚樹の段階から垂直方向への成長が優先されるため、低木種に比べ、強光では高くなることにより受光量・光獲得効率が高い。弱光では、支持器官への投資が損となり受光量・光獲得効率が低い。
宮城県仙台市内の天然林を調査地として、最大樹高や樹形が異なる20種について、ギャップや閉鎖林床など様々な環境に生育する実生・稚樹を調査対象とした。3次元デジタイザーとYPLANTを用いて、3次元形態と受光量の追跡調査を毎月行い、上記の仮説を検証した。発表では詳しい解析方法、解析結果について紹介する。