| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-211  (Poster presentation)

水耕栽培による一定窒素濃度下で育成した植物の葉と根の経済スペクトル【A】
Leaf and root economics spectrum of plants grown under constant nitrogen concentration in hydroponics【A】

*大川暉, 彦坂幸毅(東北大学)
*Hikaru OHKAWA, Kouki HIKOSAKA(Tohoku University)

 維管束植物のほとんどにおいて、光、水、栄養塩といった、成長に必要な資源は共通しているが、形態や生理機能の違いによってニッチが分かれ、多様に分化してきたと考えられる。葉の機能分化の研究は多く行われており、光合成速度の高い種ほど葉重あたり葉面積や葉窒素濃度が高く、葉の寿命が短い、一方で、光合成速度の低い種はこの反対の形質を持つといった傾向があり、葉形質は一本の軸に収斂することが明らかとなった。この資源獲得と資源保持のトレードオフに関係する軸は「経済スペクトル」と呼ばれている。機能分化の研究は根においても同様に行われるようになり、根窒素濃度と根組織密度の間にトレードオフが見られることも明らかとなった。このように測定が比較的容易である機能形質の研究は広く行われるようになってきたが、硝酸吸収速度など、根の能力を直接的に表す生理形質を解析した研究はほとんどない。根の生理形質は供給される栄養塩濃度によって大きく変動するため、種間で比較するには調節した条件下で測定する必要があると考えられる。本研究では、栄養塩濃度一定条件下で特性の異なる植物種を育成し、根の生理形質も他の機能形質同様に、経済スペクトル上に位置づけできるのかを明らかにすることを目的とした。
 草本植物4種と木本植物4種を使用し、ペリスターポンプを用いた水耕液を連続的に追加する水耕栽培法により硝酸濃度一定条件で育成した。機能形質として、葉へのバイオマス分配割合、茎へのバイオマス分配割合、根へのバイオマス分配割合、葉重あたり最大光合成速度、葉重あたり葉面積、葉窒素濃度、根重あたり根長、根直径、根組織密度、根重あたり根表面積、根分岐強度、根窒素濃度、葉重あたり葉硝酸還元酵素活性、根重あたり根硝酸還元酵素活性、根重あたり硝酸吸収速度をそれぞれ測定した。これらのデータをもとに葉と根の経済スペクトルの解析を行った。


日本生態学会