| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-213  (Poster presentation)

花蜜酵母の種類がマルハナバチの嗜好性を変えるのか【A】【B】
Nectar dwelling yeasts affect the preference of bumblebees.【A】【B】

*廣野由奈, 河野亮介(東邦大学)
*Yuna HIRONO, Ryousuke KOUNO(Toho Univ)

花蜜には酵母や細菌などの微生物が生息しており、主に送粉者によって分散される。花蜜酵母は花蜜特異的に検出される種(スペシャリスト)と、自然界で広く検出される種(ジェネラリスト)に分けられる。ジェネラリストは非生物的要因でも分散可能であるが、スペシャリストは分散を送粉者に強く依存する。花蜜酵母は代謝によって花蜜の組成を変化させ、送粉者の行動に影響を与えることが示唆されている。したがって、スペシャリストにおける蜜の代謝が、送粉者の花蜜の識別能力に寄与すると考えられる。以上より、スペシャリストとジェネラリストでは送粉者に対する誘因性、及び生理的特徴が異なることが推測される。そこで本研究では、花蜜酵母がマルハナバチの嗜好性に与える影響を明らかにすることを目的とした。Metchinikowia reukaufii (MR:スペシャリスト)、Aureobasidium pullulans (AP:ジェネラリスト)、Vishniacozyma victoriae (VV:ジェネラリスト)を用いて各酵母溶液に対するクロマルハナバチ(Bombus ignitus)の嗜好性の違い、及び各酵母の増殖速度と基質分解能の違いを調査した。各酵母の増殖速度と基質分解能を調査したところ、3種で増殖速度が有意に異なり、MRが最も増殖が速かった。加えて3種の基質分解能も異なることが分かった。また、各酵母のスクロース分解量を測定したところ、VVと比較してMRとAPはスクロース分解能が高いことが示唆された。行動実験では、クロマルハナバチはAPとMRをそれぞれ含む溶液と無菌溶液を識別したが、VVを含む溶液は識別しなかった。酵母の有無ではなく学習に用いた溶液を選択する傾向が見られた。マルハナバチはスクロース優勢の蜜を好む傾向があるため、酵母溶液と比較してスクロース濃度が高い無菌溶液を選択したと推測される。本研究の結果は、スペシャリストとジェネラリスト間で、クロマルハナバチの嗜好性に与える影響、及び生理的特徴が大きく異なることを示唆した。


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